TEF/テスト技法

技法名 AllPair法

技法名(英語) pairwise testing もしくは All-pairs testing

説明

ブラックボックステスト技法の1つです。本技法の適用目的は、直交表と同様で、デシジョンテーブル(原因結果グラフ、CFD法を含む)と異なり、入力条件の組合せに仕様上は論理関係が特にないようなケースで全体を網羅的に確認することです。

この技法は、まず、ソフトウェアに与えられる入力の種類を因子としてリストアップします(例:用紙サイズ、用紙方向)。次に各々の因子に対してその選択肢を同値分割・境界値分析などを使用して決定します(例:用紙サイズという因子に対する水準は、A3、A4、B4、葉書など)。そして、選定した因子・水準をAllPair法のツール(例えばPICT)に与えてテストマトリクスを作成します。

直交表と違うところは、直交表が2因子間の水準組合せが「同数回」出現するのに対して、AllPair法では「同数回」という条件を外すことでよりテストケース数を削減できる点にあります。

使用例

電車の切符を発券するソフトウェアを考えてみましょう。

乗車駅、下車駅、大人・子供、枚数、表示言語などが入力あたります。特急指定券の発券システムを考えるとさらに、座席の位置、禁煙席の希望、席のグレード、往復券とするか、支払方法といった因子が考えられます。それぞれの因子に対して水準を決定します。

例えば、因子・水準として、

因子水準
乗車駅A、B
下車駅近県、遠方
種別大人、子供
枚数1枚、3枚
表示言語日本語、英語
座席の位置窓際、通路側
禁煙席の希望禁煙、喫煙
席のグレード普通、グリーン
往復券片道、往復
支払方法現金、カード
分割払い一括、分割

を選んだとします。

このとき、現金で分割払いの組合せはない(=制約)ものとします。

まず、上記をPICT形式で書き換えます。

乗車駅:A,B
下車駅:近県,遠方
種別:大人,子供
枚数:1枚,3枚
表示言語:日本語,英語
座席の位置:窓際,通路側
禁煙席の希望:禁煙,喫煙
席のグレード:普通,グリーン
往復券:片道,往復
支払方法:現金,カード
カード払い方法:一括,分割
IF [支払方法] = "現金" THEN [カード払い方法] <> "分割";

そして、PICTでマトリクスを生成すると、

No.乗車駅下車駅種別枚数表示言語座席の位置禁煙席の希望席のグレード往復券支払方法カード払い方法
1B遠方子供1枚英語窓際喫煙普通片道カード一括
2A近県大人3枚日本語通路側禁煙グリーン往復現金一括
3A遠方子供1枚日本語窓際禁煙普通往復現金一括
4B近県大人1枚英語通路側喫煙グリーン往復カード分割
5B近県子供3枚英語窓際禁煙グリーン片道現金一括
6A遠方大人3枚英語通路側禁煙普通片道カード分割
7A近県子供3枚日本語窓際喫煙普通片道カード分割
8B遠方子供1枚日本語通路側禁煙グリーン往復カード分割
9A遠方大人3枚英語窓際喫煙グリーン往復現金一括

となります。

また、同様のことをHAYST法を用いると、

No.乗車駅下車駅種別枚数表示言語座席の位置禁煙席の希望席のグレード往復券支払方法分割払い
1A近県大人1枚日本語窓際禁煙普通片道現金一括
2A近県大人1枚英語通路側禁煙グリーン往復現金一括
3A近県大人3枚日本語通路側喫煙普通往復カード一括
4A近県大人3枚英語窓際喫煙グリーン片道カード分割
5A遠方子供3枚英語窓際禁煙グリーン往復現金一括
6A遠方子供3枚日本語通路側禁煙普通片道現金一括
7A遠方子供1枚英語通路側喫煙グリーン片道カード一括
8A遠方子供1枚日本語窓際喫煙普通往復カード分割
9B近県子供1枚英語通路側喫煙普通往復現金一括
10B近県子供1枚日本語窓際喫煙グリーン片道現金一括
11B近県子供3枚英語窓際禁煙普通片道カード一括
12B近県子供3枚日本語通路側禁煙グリーン往復カード分割
13B遠方大人3枚日本語通路側喫煙グリーン片道現金一括
14B遠方大人3枚英語窓際喫煙普通往復現金一括
15B遠方大人1枚日本語窓際禁煙グリーン往復カード一括
16B遠方大人1枚英語通路側禁煙普通片道カード分割

となり、7件テストケースが増えます。

ただし、例えば「乗車駅×枚数」の水準の組合せが出現した回数をカウントすると、AllPair法で生成した方は、

乗車駅枚数出現回数
A1枚1回
A3枚4回
B1枚3回
B3枚1回

であり、HAYST法で生成した方は、

乗車駅枚数出現回数
A1枚4回
A3枚4回
B1枚4回
B3枚4回

とバランスよく組み合わされています。
どちらを選択すべきかは、テスト対象ソフトウェアによります。

補足

今回の例では、網羅率は、

テスト技法2因子間網羅率3因子間網羅率
AllPairs法100%83.33%
HAYST法100%95.85%

でした。

参考文献

書籍: ソフトウェアテストHAYST法入門

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Last-modified: 2008-08-24 (日) 09:48:35 (5716d)